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2007年11月

記憶の欠片

私が、孔明さんの知音? 

畏れ多すぎて恐いくらいだ。

「孔明殿・・・・・」

孔明さんは、再び琴を 弾き始めた。

琴の音が、私の細胞まで 鷲掴みにする。

淋しいわけでも

悲しいわけでもなく

ただ、儚い・・・。   

                    
         
そんな想いを 抱えたまま

孔明さんの琴を聴いていたら

やっと、解った。

し~ちゃんが言ったように、

孔明さんがいつもと

変わらない態度であっても

それを冷たいとか、

哀しいと感じてしまうわけが

やっと解った。  

           

その答えを今ここで

言葉にしない限り

孔明さんに出会った意味が

永遠に奪われてしまうような、

そんな気さえする。 何でだろう?

「玄子?」 

ううん。その前からだった。

孔明さんに会ってからずっと

心のどこかで思い続けていた事・・・

私が意を決して椅子から立つと

孔明さんは弦を静めた。

「孔明殿の子期になりたいから

是非、で・・・・・で・・・・で・・・」

頭が痛くなって、

不思議な感覚の波が私を襲う。

「なんだ?

デートでもしたいのか?

今時の若者は大胆だなぁ~♪」

元直さんが冷やかす

  「でーと?」

ち、ちが~う!!  

孔明さんはそういう

気まぐれな対象じゃなくて

前世の記憶?

無くした記憶の欠片?

私は、重い頭に押し潰されるように

跪いた。

「孔明殿・・・・・

・・・・・私を・・・・・

弟子に、弟子にしてください」

あ・・・頭が割れそう・・・

それなのに、

「孔明・・先・・・生」

違和感無く呼べるのは何故だろう?

  「孔明・・・先生、お願いします。

鳳雛先生でも 臥龍先生でもなく

孔明先生の 弟子にしてください

私は多分、そのために

今日まで生きて来たから」

言葉が勝手に

ジェットコースターに 乗ってしまった。

                             

それにしても

無意識に懇願する私は

どうしたんだろう?

私じゃない、別の誰かが

乗り移っているような。

でも、本音。

「玄子・・・・・」

孔明さんが 跪く私の肩を 白羽扇で包みこんだ。

「玄子、実はーー」

|

知音

「子期?」

次から次へと

新しい名前が出てくる。

「伯牙と子期・・・」

孔明さんは琴の上に手を置くと

こんな話をしてくれた

↓こっから孔明さんのお話。

*****
          
春秋時代、兪伯牙と呼ばれる

琴の名手がいた。

その奏でる琴の音は素晴らしく

馬さえも草を食べるのを止めて

顔を上げて耳を傾けるほどだった。

だが、当の伯牙は孤独だった。

なぜなら、琴の音に籠められた

彼の心の動静や意味を知る者は

誰一人いなかったからだ。

そんなある日、国王からお呼びが掛かった

伯牙は宮殿に招かれた。

しかし、国王は僅かの間、伯牙の琴を

聞くと、手で追い払うように演奏を

止めさせた。

「なんじゃそれは!

女官の舞には遠く及ばんわ!」
             
            
国王は伯牙を退室させ、

女官の演舞を堪能し始めた。

伯牙は琴を抱えると何も言わず

宮殿を後にし、山野を彷徨った。

「天下広しと言えども

我が琴の音を聴き取れる者は

只の一人も居ないのか」

と絶望の闇に沈んでいく伯牙。
          
             
そんな精神状態を反映したかのように

急な大雨が伯牙を襲い、

暫く、人気のない大きな岩の下で

雨宿りをすることになった。

雨は益々激しくなり一向に止む気配はない。

そんな時、伯牙の隣に一人の農夫が

駆け寄ってきた。

(農夫と話すことなどあろうか)

ただでさえ人付き合いの悪い伯牙は

無言のまま雨が止むのを待ったが、

この日の雨は、小降りになる気すらなかった。
           
               
「琴でも弾くか・・・」

二人きりで無言の時を過ごすことに

疲れを感じた伯牙は

おもむろに琴を弾き始めた。

琴を弾いているうちに

色々な煩悩や苛立ちは消え去り

やがては、高山に游ぶ仙人の心境にまで

至った。その時である

「あぁ・・・なんとも高尚な山であろうか」

伯牙は一瞬、ドキッとしたが

まさか農夫に己の気持ちなどわかる筈もなく

幻聴でも聞いたのだろうと琴を引き続けた。
             
               
雨の音は伯牙の心を大河に

導いた。

「美しい・・・

なんと洋々たる河の流れか・・・」

幻聴じゃない、と伯牙は確信した。

隣に居る農夫の唇から伯牙の心の声が

飛び出しているのだった。

「私は兪伯牙と申すもの

貴殿のお名前をお教え願いたい」

伯牙は琴を弾くのをやめ

農夫と向かい合った。

「私は鐘子期と申します

何とも見事なものですね

まるで天の声のようです」

伯牙は感涙して冠を正すと

子期のために琴を弾いた。
          
          
伯牙が奏でて子期がその心を言葉にする・・・

「嗚呼、子期よ。

どんなにしても、君の心思からは

逃れられないな」

そして、二年後に再会することを

約束した伯牙は今まで以上に

琴の腕を磨いた。

全ては、心の音色まで解ってくれる

子期のために。
       
         
だが、二年後、伯牙が子期に

会いに行くと、子期は一年前に

病死したと知らされた。

最後の最後まで、伯牙に

会いたいと望みながら・・・
            

唯一の知音である

子期が居ない世の中で

琴を弾くことに意味がないと感じた伯牙は

子期の墓前で曲を捧げてから

「もう、琴を弾く必要はない」

と嘆いて

琴の弦を切った、とも

岩に叩きつけて壊した、とも

言われている・・・。

それからは、伯牙は

生涯二度と琴を弾くことはなかった。

*****
            

「というわけで

己を魂レベルで

認め、知ってくれる

真に心が通じ合った友を

『知音』と呼ぶようになったんだ」

知音・・・か・・・。
              

でも、さっき「子期になれるかな」

って聞いたってことは

私が孔明さんの知音に

なれるか?ってこと!?
          
 

|

琴に想う

「玄子、ここ座れよ」

元直さんが孔明さんの

真正面に椅子を用意してくれた。

「え? いいの?」

不機嫌な孔明さんと真っ向対決!?
      
             

「座れ、玄子。

琴の音は心と耳を

澄まさなければ

聞き取れないから」

あれ? あんまり不機嫌じゃない?

「孔明殿、先ほどは

失言。本当にごめんなさい」

謝るなら今のうち。

「何が? それよりも

何を弾こうか?」

孔明さんはお香を焚いて

その煙に指先を翳(かざ)した。
         
              

「玄子っちはマイナス思考だから

悪いほうに波動を受け留めてしまうん

じゃぞいな。

孔明の言葉は玄子っちの

気分次第で良く受け止められたり

哀しく受け留めたりしてるだけぞいな

もっと気楽にいこうぞなもし!」

し~ちゃんって孔明さんとは

対極的だけど、どこか似てる。

私はし~ちゃんの顔と

孔明さんを見比べながら思った。
            
          
「琴って何の樹で創ってるの?」

座ると意外と琴は大きいことに気付いた。

130cm位はあるんじゃないかな?

琴体には混沌とした模様が入っている。

「表面は桐の木、

底面は梓の木だよ。

琴の木といえば・・・

琴にまつわる

不思議な逸話があるんだが

題して、琴サスペンス事件だ」

さ、サスペンス?
        
             

「殺人事件でも起きたの?」

「あぁ、むか~し 昔

春秋時代だったかな」

春秋って確か・・・

「管仲って人が

生きてた時代だったよね」

本当に大昔だね、これは。
        
          
「琴でサスペンスなんて

どんな風に?

孔明殿、教えて!」

ただで教えるのも

勿体無い、と

孔明さんは笑うと

「今から私が弾く曲を

よくよく鑑賞し、

どんな情景が浮かぶか

答えてみろ。

回答次第で

教えてやる」
          
             
孔明さんは右手で

静かに弦を弾き始めた。

なんだか、川の流れを

感じさせる曲だ。

孔明さんが、清流だからかな。

水の雫が弾き飛んだり

大河のような轟音が渦巻いたり・・・
          
         
「どうだ?」

孔明さんが弦を優しく落ち着かせながら

私に尋ねた。

「河とか水って感じ」

こんなんで答えになってるのかな?

「ふぅん・・・」

孔明さんは一瞬、

口角を上げた。

「じゃ、これは?」
              
         
私の答えを受け流したまま

孔明さんは二曲目を弾いた。

何となく・・・山!な感じがする曲だった。

人間では昇りつけないような

仙人が住んでいそうな山。

「山!」

私は感じたことも付け加えて

感想を述べた。
              

「へ~へ~へ~」

今度は元直さんと

し~ちゃんも

意味深な反応をした。

多分、またマヌケなことを

言ってしまったのだろう。

でも・・・
       
         
「サスペンス聞けなくてもいいや」

と割り切った私を

「なんでだ?」

元直さんが不思議がる。

「孔明殿が奏でた曲と

琴の音色にすっごく感動したから」

琴は尖った心さえ癒してくれる。

久々に素直になってしまった。
          
         
「玄子、

君は私の子期になれるかな」


           
             

|

甘党

何で、臥龍は禁止なの?

とは訊けないまま

宴会はお開きとなった。

いや、訊けないんじゃなくて

訊ける雰囲気じゃなかったんだよね、

孔明さんのオーラが。
           
            
「ねぇ、均ちゃん。

何で孔明殿、

あんなにも臥龍に敵対してるの?

何があったの?」

均ちゃんと食器を洗いながら

私は、孔明さんに聞けないことを

訊いてみた。

「どうしようかな・・・

とりあえず、これ

出してきて」

均ちゃんは首を捻りながらも

答えをはぐらかすように

お茶とお菓子みたいなものを

もたせた。

「これ、なに?」

「砂糖黍で作ったお菓子だよ

均ちゃんっていい奥さんなれるよ。
          
            
それにしても、元直さんって

酒好きの甘党なんだ。

鳥の足に唐辛子が

たんまりと塗られてるのは

きっと、孔明さんの好物なんだろうな。

緑色の卵はし~ちゃんかな?
           
            
「お~遅かったぞ!」

元直さんが手招きをする。

「さぁ、好きな所にお座り」

ということで目の前にある選択肢は

長方形のテーブルを囲むように

孔明さん、元直さん、し~ちゃんが

手前と左右に分かれて座っている。

「玄子、好きなやつの隣に座れよ」

元直さんが無理難題を押し付ける。

「まずは、一献どうぞ!」

私は話を逸らすように

お茶とつまみをテーブルにつけた。
        
          
「士元殿、どうぞ」

し~ちゃんは、

「皮蛋(ぴーだん)は美味いのぉ」

と緑色の卵、皮蛋をパクパク食べた。

「元直殿、孔明殿」

元直さんにお菓子

孔明さんに鳥の足を出すと

「逆だ」

孔明さんが顔をしかめた。

「えぇええ?

孔明殿って甘党だったのぉ?」
          
             
私は驚きながらも

お菓子を満足そうに食べる

孔明殿をじ~~とみた。

本当に甘いの好きなんだ・・・。

「君も食べてみるか?」

じっと見られて食べ辛かったのか

孔明さんは私にも勧めてくれた。

こういう、孔明さんって・・・いいな。
                 

「おぉ! 美味しい!!!」

疲れが緩和される優しい甘味。

「頭を使うと甘いのが欲しくなる

もんじゃべ~」

し~ちゃんもお菓子に手を伸ばした。

し~ちゃん、何気にまだ謎。
          
           
「玄子っち!

お主はなかなか良い相を

してるぞいぞい」

え?

もしかして、し~ちゃんって

すっごく えらい人相見?

何かいい人っぽいぞ!

「稀に見る相の持ち主っぽいぞいぞい!

玄子っちは、羽ばたくぞいぞい!」

嗚呼、わかってらっしゃる!

人は見かけじゃないよ!

し~ちゃん、何ていい人なの!
             
          
「士元兄、玄子が調子に

乗ってしまいますよ」

孔明さんが私の浮かれ気分を

沈めようとした。

「よいぞいぞい!

こんなご時勢だ。

明るい光を個人レベルで

燈せられるのなら

いつかは世の中も明るく

なるぞいぞいや」

し~ちゃんは二パッと笑う。

いい笑顔だ!

「でさ、玄子はいつから

稽古始めるんだ?」
        
            

元直さんが興ざめするようなことを

言ってきた。

「ほぉ、なんの稽古ぞいな?」

し~ちゃんは興味津々だ。

「四大文明のどれかを

学ぶことになっているので

鳳雛先生には、その後

引き渡そうかと」

孔明さんが淡々と説明する。

孔明さんにとって私は人質?

でも、何のための?

退屈凌ぎのため?
         
           

「なんだ?玄子

どれを学ぶか決まったか?

一日も早く、会得してくれ給え

私は生憎、暇じゃないんでな」

孔明さんがブッキラボウに言う。

孔明さんって本とに

へそ曲がりで

気まぐれだから

どの孔明さんが本心なのか

わからない。
         
           
「ねぇ、孔明殿。

琴ってどんなの?

今、弾いてくれませんか?」

孔明さんが不機嫌だと

私は挑発的になってしまう。

「他人にやれってくらいだから

孔明さん、たとえ酔っていても

完璧に弾けますよね?」

あぁ、何だって私は・・・

本当は、孔明さんに

教えて欲しいだけなのに。
              

「・・・・ふぅん・・・」

孔明さんの声が氷みたいだ。
           
              
孔明さんは一呼吸おくと

無表情のまま、琴に向かい合った。

|

臥龍か鳳雛

「臥龍・・・鳳雛・・・」

私の頭から離れない

キーワード。

「ねぇ、孔明殿。

孔明殿から見て

臥龍、鳳雛ってどんな感じ?」

孔明さん何か知っていそうだったし。

「ブッ! 

玄子、君は藪から棒に何を

言うのかね?

何故私に訊く」

孔明さんは少しむせた。

何でこういう反応なんだろう?
            
             
「さっきから黙って

酒を愉しんでいる

士元殿は如何ですか?」

少しは話をしてみようかな。

「ブハッ!

きっと、良い男だぞい。

くかかかか」

し~ちゃんは大笑いするだけ。

「元直殿は?

二人のこと知ってるんでしょ?」

元直さんなら答えてくれそうだ。

「ああ。知ってるよ」
           
             
やっぱり、元直さんは違うぜ!

真面目に向き直った元直さんの

言葉に、私は注目した。

「臥龍、鳳雛より

俺のほうがいい男だぞ」

か・・・からかわれてる・・・

「え~ん・・・

均ちゃ~~~ん」

均ちゃん、君だけは

違うと信じてるよ!

均ちゃんだけが救いなんだから!
          
               
「え・・・・あ・・・・

えっと・・・・・

臥龍はね、実はーー」

と言いかけた均ちゃんの口を

孔明さんが抑えた。

「玄子、自分で探すことに

意義があるとは思わないか?

それは自分探しにも通じる筈だ」

孔明さんが初めて尤もらしい

言葉を私にくれた。
            
              
「二人のうちどちらが

お薦め?

それだけでも教えて!」

「そこまで知るか!」

孔明さんが

白羽扇をハリセン代わりに使った。

「孔明さんって優しい言葉の後に

なんで一気に冷え込むの?」

言葉の温度がクルクル変わる

変な人だ。
          
             

「気まぐれだから」

「変人だから」

「へそ曲がりだから」

「イソギンチャク・・・

じゃなくて

天邪鬼(あまのじゃく)だから」

ここぞとばかりに

均ちゃん、元直さん、し~ちゃんが

愉しそうに答えた。

「元直兄、

どさくさに紛れて2回も言いましたね」

先生たちはそれを

目を細めながら愉しそうに見ている。

「今日の酒は美味いな~

玄子妹のおかげかな、孔明」
           
             
て、照れるな~(^v^)

「まさか!」

って即答しないでよ!

「ほら、又だ!」

元直さんが勝ち誇ったように言った。

「孔明は照屋さんだから!」

元直さんにからかわれて

孔明さんはむせまくった。

こんな孔明さんもいるんだな~。
             
               

「玄子っち!」

し~ちゃんが変な呼び方をする。

「鳳雛のほうが

玄子っちには合ってるぞよ~」

あ、そうなんだ!

「・・・かもな。

鳳雛は相手の心を酌める男だ」

孔明さんも冷静に答える。

「え、おい!」

元直さんが何か言いたげに

孔明さんの肩を掴んだ。
        
        
「鳳雛先生に

弟子入りさせてもらえるよう

私からも彼に会うことがあったら

頼んでおくからな」

何だかんだいって

孔明さんはやっぱり優しい。

「ありがとう!!

早く鳳雛先生に会いたいな!」

初めて孔明さんにお礼を言った気がする。

「諸葛玄子でいるのも

それまでの僅かな時間だ

鳳雛先生に弟子入りが許されたら

新たな名前を貰えるだろう」

孔明さんが白羽扇を左右させた。

「でも・・・臥龍先生にも

会って見たいな」

白羽扇が止まった。

ってことは、臥龍と孔明さん

何か関係あるのかな?
                
               

「やめておけ。

臥龍は・・・やめておけ」

|

微妙な関係

「臥龍、鳳雛?」

私は司馬徽先生の

目を見た。

「ふぉ、ふぉ、ふぉ

よきかな、よきかな」

司馬徽先生は酒を呑みながら

笑うだけ。

「ねぇ、孔明殿、元直殿

臥龍、鳳雛って知ってる?」

孔明さんは「プッ」と笑いながらも

咳でごまかし

「う~ん・・・そうだな~」

何か曖昧な感じ。

「元直殿は?」

元直さんはニヤっと笑うだけ。

「ねぇ、均ちゃんは?」

頼みの均ちゃんまでもが

「微妙~」

へんな答え方をする始末。
          
           
「水鏡先生」

孔明さんが司馬徽先生に向かって言った。

「水鏡? 字?」

司馬徽水鏡って大いにエコじゃないよね。

「司馬徽先生の道号だよ。

命名したのは龐公父だよ」

「龐公父?」

なんで?

『徳』はどこで

『父』に変換されたの?

孔明さんの父上は

とっくに亡くなってるし

第一、苗字が違うのに?

「し~ちゃんは龐じぃちゃんの甥で

僕たちの姐ちゃんは

龐じぃちゃんの息子の山民さんと

結婚したんだよ」

ん?

何か複雑だな。
          
           
孔明さんのお姉さんと

龐徳公先生の息子さんが結婚。

そんでもって

龐徳公先生とし~ちゃんが

叔父、甥の関係・・・。

ってことは、孔明さんとし~ちゃんは

何気に親戚ってことなんだ。

「さらに水鏡先生と

龐公父は義兄弟の契りを結んでいる

水鏡先生が龐公父を

『龐公』と呼んでいるから

私も龐公父と呼ばせて頂いているんだ」

え?え?え?

真実が明らかになるのが

早すぎて事情がわからん!!
             

「もっと複雑なことに

鄷公久師匠は水鏡先生の師だが

私も鄷公久師匠に兵法を学んでいる。

その上、私は

水鏡先生にも地理天文などを

学んでいるんだが、

言っている意味が解るか?」

孔明さんがパニクル私を面白がってる。

「何がどこでどうしたって?」

なんて複雑な関係の人々・・・。

頭を抱えて悩む私を

みんな面白そうに笑っている。
           
           
「玄子さんや、

臥龍 鳳雛に

弟子入りすれば

きっと未来が開けるぞい」

悩める私に

水鏡先生がキーワードを

思い出させた。

「水鏡先生、

臥龍、鳳雛とはどなたですか?」

記憶も取り得もない私は

複雑な人間関係を

どーでもいいことにしようと、

「臥龍 鳳雛」という響きに

光を求めようとした。
          
「ふぉふぉふぉ

よきかな、よきかな」


よくないって!             

|

集会?

「諸葛玄子、

よきかな、よきかな」

し~ちゃんではなく

杖を突いたご老人が

いつの間にか現れていた。

「先生!」
           
             

今日は祭りなの?

「龐徳公ももう少ししたら

来るだろうて」

まだ誰か来るんかい!

何がなんだか解んない。

こんなに大勢、

初対面が苦手な私には

キッツい(*_*)

「均ちゃ~ん・・・」

私は助けを求めるように

袖を引っ張った。

「君に害はない。

心配するな。

あとでちゃんと紹介するから」

引っ張ったのは均ちゃんの袖ではなく

孔明さんの袖だった。

あ~! すでにパニクッテます。
             
              
「ま、立ち話もなんだから

入りましょう。

士元兄が美味しい酒を

持って来てくれたようだし」

昼間っから酒のむんかい!

「本音で話すには酒は

もってこいだろ!」

元直さんは士元さんから

酒の入った壷を奪うと

嬉しそうに抱きしめた。

猫にまたたび、

元直さんに酒・・・。
           
            

初対面の人たちと同じ空間に

居たくなかった私は

均ちゃんと一緒に昼食を

手伝った。

「均ちゃん・・・

一体何なの?」

均ちゃんは何気に料理が上手い。

慣れた手つきで素早く

色んなものを作っている。

「龐じぃちゃんが来てからのほうが

説明しやすいかも。

玄子ちゃん、

恐がらなくていいよ」

癒し系の均ちゃんの笑顔だけが

私の今の支え。
        
         
私と均ちゃんが

料理を持っていくと

既にみんなスタンバって

飲み会は始まっていた。

ご老人三人と

し~ちゃん(って顔じゃないんだけど)

それから、孔明さんと元直さんが

楽しそうに盃を酌み交わしていた。

「玄子、座れ!」

逃げ出したい私を

孔明さんと元直さんが

二人の間の席を

パンパンと手で叩いて勧めた。

この二人の間なら大丈夫だよね。

私は二人を壁代わりにして

何とか初対面の恐怖を逸らそうとした。
           
          
「こちらは我が師」

と言って孔明さんに紹介されたのは

龐徳公(ほうとくこう)先生、

司馬徽(しばき)先生

それから

鄷 公 玖(ほうこうきゅう)先生だった。

「玄子さんは

臥龍、鳳雛をご存知かな?」
                 

司馬徽先生が不意に

白髭をさすりながら

そんなことを訊いてきた。

「臥龍、鳳雛?」

|

し~ちゃん

「よぉ~

元気じゃったかいな!」

だ、誰?

何となくクマちゃんっぽい顔立ちだ。

爽やか系の元直さんや

綺麗系の孔明さんとはちょっと違う。

・・・って孔明さんはビジュアルじゃなくて

瞳が綺麗なだけ!

孔明さんは清流のような人だから。
           
             

「よっ!久々だな、士元!

程よく元気そうだな」

元直さんが笑顔で迎えた。

「士元兄。面白いことは

何かありましたか?」

孔明さんも笑顔だ。

「あ!し~ちゃん!」

均ちゃんまでもが

走り寄って来た。
          
            
            
「ねぇ、均ちゃん。

この方は?」

し~ちゃんって顔じゃないけど

均ちゃんが心を許してるなら

悪害はないだろう。

「あ、し~ちゃんはね、

顔は恐くて近寄り難いけど、

心は優しいから

心配しなくていいよ!」

って本人を前に・・・。
         
          
「お~均のじ!

大きくなったな!」

し~ちゃん とやらは

均ちゃんの頭をくしゃくしゃに

撫でた。

「はて、こちらの

お嬢チャンは・・・?」
           
             
し~ちゃんは

孔明さんの背中に隠れた私を

見つけて3人に訊いた。

「あ~、この子は・・・」

孔明さんと元直さんは

『お前って一体なに?』

という眼差しを私に思いっきり

みせてから同時に答えた。

「妹です」

え・・・妹?

マジで? いいの?
           
           
「って誰の妹かいな?」

し~ちゃんが眉を顰(ひそ)めると

「う~ん・・・」

孔明さんは元直さんの肩に

手をかけて二人で後ろを向いた。

何を話してんだろう?

私もとりあえず、二人と同じ方向に

聞き耳を立てた。
           
          

「どっちの妹にする?」

「適当でいいんじゃん?

気が向いたほうで

「俺は・・・べつにいいけど

徐玄子(xu xuan zi)って

口回らなくないか?」

「いや、諸葛玄子って

漢字四文字も使うのは

エコ生活に反するのでは?」

って、何て会話してんのよ!

名前と自然環境関係ないし!

しかも、諸葛孔明だって

四文字も使ってるジャン!

亮も入れたら五文字だし!!
               

そんな理由だけで決められる私って・・・。

猫の子をどっちが世話するか

相談してるんじゃないんだからさ!
            
            
「じゃ、ジャンケンで決めよう」

おいおいおい。

何て人たちなの。

「恨みっこ無しでいいかも」

ちょっと! 何それ?

引き受けたほうが恨むんかい!

だったら妹じゃなくてもいいよ。

そこまでしてまで妹になりたくないわ!

「仮令(たとえ)、

玄子を妹に出来なくても

恨みっこ無しってことでいいな、

孔明?」

えっ!?

「承知!

たまにはジャンケンで真剣勝負も

悪くはないな・・・。

男に二言はない!

一回勝負で決めよう」
           
            
            
「で・・・・どっちの妹なんじゃいな」

ジャンケンを終えた二人に

し~ちゃんが髯をさすりながら訊いた。
            
               

「この子は・・・

諸葛玄子です」


   

|

その気!

「お前の指図など

誰が受けるか!」

孔明さんが憎たらしい顔で

私を睨む。

「迫真に迫る演技だな。

孔明お前役者になれんじゃない?」

元直さんが違うところで

感心している。

「こんな憎たらしい奴を

服従させるの?」

孔明さんの顔が段々と

本当に生意気な武将に思えてきた。

「武将は何故か傲慢な奴が多い。

命懸けで戦っている武将に引き換え

軍師は策を練るだけで

実益はないと思う輩が多いようだ」

元直さんが首を振って嘆いた。

「・・・と孔明は今思っているので

玄子の策略なんて聞いてられっか!

って感じだ。さぁ、どうする?」
          
             
            
どう~するったって、

どうしませう?

「じゃ、とりあえず・・・」

私は剣を孔明さんに向けた。

「言うことを聞かなきゃ

刺すよ!」

まずは脅してみる?

「へなちょこ軍師に

何が出来るってんだ!」

孔明さんはニヤっと笑うと

白羽扇でポ~ンと私の手から

剣を払い落とした。
            
              
「う~付け上がらせるだけジャン!」

私は剣を拾いながらそのまま

ヒザマづいた

「お願いだから言う通りにしてください!」

今度は腰を低くして懇願モード。

「そんな卑屈な軍師の立てる

策略なんざ、敵に通じるはずないだろ!

余計舐められて終わりだ。

永遠に馬鹿にされ続けるだろ~が!」

元直さんが

やれやれ、と肩をすくめた。
           
              
「玄子・・・知ってるか?」

孔明さんが急にマジな声を出した。

「な、なに?」

孔明さんに

嫌われちゃったかな・・・

もしや・・・

『私は、馬鹿は嫌いだ、

今すぐ出て行け!』とか?
            
             
「知ってるか?

今日の昼食は・・・

山菜ごはんと麻婆豆腐

夕食は・・・回鍋肉と薬膳炒飯だ!」

な、何ですと~!

食べて~!!!

「私たちの納得いく答えが

出せなければお前が調理しろ。

だが、食べさせん!!

ダイエットでもしてろ!」

い~や~だ~

「もし答えられたら

この私が直々に作ってやる」

孔明さんの手料理?

「孔明の手料理って

隠し味何なんだ?

すっげ~旨いよな。

おい!玄子真面目に答えろ!

次が最後のチャンスだ!」

って元直さんが私以上に

真剣な眼差しになってるし。

この二人ってプレッシャーかけるの

大好きだな~。
         
                           
「昼夜ともに絶対、喰う!」

私は真剣に考えた。

今の私には剣術よりもメシ!

何とかして生意気な武将を黙らせなきゃ。
                  

でもさ、ある意味内輪もめだよね。

こんなことで部下同士が喧嘩しちゃったら

主君はどう対処するんだろう?

ん?まてよ・・・。
          
           

「殿!」

私は元直さんに向き直った。

「なんじゃ? 軍師殿?」

元直さんは、じじぃ君主を演じた。

(モデルは誰なの?)

「殿の剣をお貸し願えまいか?」

あ~元直さんが麻婆豆腐に見える・・・。

「ほれっ」

元直さんから剣を受け取った私は

孔明さんと向かい合って

主君の剣を見せつけた。

「我が命に背くことは

殿に背くということだ!」

山菜ごはんも美味しいだろうな~。
                

「くっ!

仕方がない。殿の命は絶対。

今回だけはお前の戦略を

とくと、みてやるよ!」

孔明さんが、悔しそうに舌打ちした。
             
           
「じゃ、これで合格?」

「やるじゃん。まぐれだけど。

あとは実力をみせればいいだけだ。

そうすればこんな事は二度とない。

それどころか信頼関係も築きやすい」

演技を終えた孔明さんは

フッと笑ってくれた。
                

「やったあ!昼飯 夕飯

これで安泰じゃぁあ\(^o^)/」

しかも孔明さんが作ってくれる。

「お前って本当、

食いもん絡むと力発揮するな」

元直さんが呆れた。
          
           
でも、そうなると分かっていて

孔明さんは・・・。

「人間、その気になれば

何でも出来るって実験、成功!

ってとこかな」

孔明さんは何食わぬ顔で

視線を逸らした。
           

でも、孔明さんが「その気」に

なるのはどんな時なんだろう?

という好奇心がこの頃から

私の中に芽生えだしていた。
           
          
「あ!士元兄!!」

|

剣術のお稽古

「玄子、なんだその

屁っぴり腰は!?」

へっぴり腰?

「か~っ なっとらん!

剣を恐がってどうするんだ!」

剣じゃなくて元直さんが恐い・・・。

そうです。

今日から元直さんの

剣術のお稽古が始まったのです。
               
               
「元直殿恐いよ~

うっ~(T_T)」

思わず涙目になる。

「あ・・・わ、悪い!

見込みがあるからこそ

厳しくしてるんだぞ

頼むから泣くな! な?

元直さんが慌てた。

「ははははは!」

それまで黙って稽古に励んでいた

孔明さんが高笑いした。
            
               

「元直兄!

これほど狼狽する元直兄は

実に面白い!

はははははは!

元直兄にも弱点があったとは!

玄子の立ち姿は確かに笑えるし!

剣術とは、何と面白きことか!!」

孔明さんってば!

ちょっと!笑い過ぎだって!!

いつもは『フッ』ってしか

笑わないのに、何で私が絡むと

爆笑するのよ!
             
              
「こ、孔明! そんなに爆笑するな!

お前だっていつもは声に出して

笑わないくせに!

ま、俺たちは玄子が来てから

調子が狂いっぱなしってのが

共通点だな」

やれやれ、と元直さんは

私を溜息混じりに見つめた。

「けど、孔明。

お前、見かけによらず筋が良いな。

剣を持っただけでヨロメクかと

思ったが・・・」
         
            
               
「玄子じゃあるまいし。

それに、畑仕事のお蔭で

基礎体力には問題ないよ。

・・・そうだ、玄子。

最初は体力づくりから始めたらどうだ?

耕す畑は既に用意してあるぞ!」

「おう、それは名案だ!」

ってこの二人はな~んで

いつも私の意見聴いてくれないの?

「一通りチャレンジしとけば?

そのうち自分に合うもん

見つかるんじゃない?」

そして、何で孔明さんは

私の心の声に反応するような

タイミングでーー。

「私が君ならどう思うかと

推測すれば自ずとわかるさ」

すっげ~

やっぱ変人だけあって

只者じゃないや!
           
            
「じゃ、応用編だ」

基礎もなっていない私に

元直さんがクイズを出した。

「あなたは軍師です。

折角素晴らしい策略を立てましたが

生意気な武将が従おうとしません。

剣を使って従服させてみなさい!」

え~?

「じゃ、孔明殿が生意気な武将だとして・・・」

孔明さんは一瞬、ムッとしたが

「やれるもんならやってみろ!

君には絶対に従わないぞ!」

得意の挑発をしてきた。

う~ん。

ここは真面目に考えよう。

シンキングタ~イム<`ヘ´>

次回の更新まで考えま~す!
              

「今週中に答えろよ!」

|

変人?

「雇う?

なんだ?就職の面接でも

してたのか?」

元直さんが孔明さんに聞いた。

「いや・・・

明日にでも家を出て日雇いバイト探すと

言っていたのだが・・・」

食事の用意が整った部屋に向かいながら

孔明さんは事の成り行きを説明していた。

「はぁあ?玄子、何言ってんの?」
              
               
元直さんが “ひょっとこ” のような

表情をして私を振り返った。

「玄子って名前だけもらって

約束も果たさずに逃げんのかよ!」

約束?

「俺たちの過去を知ったからには

生きてここを抜け出せると思ってたのか?

琴、書道、絵画、囲碁の

どれかを学ぶのが契約だっただろ?」

あ・・・てっきり忘れてた。

「ど~でもいいことだから、

そんな契約忘れてたよ」

孔明さんが冷たく言い放つ。

「孔明、素直じゃないな。

本当に!

玄子がいて楽しいくせに!

少なくとも、俺は楽しいぜ」

げ・・・元直さん・・・
            
           
「僕も!

玄子ちゃん、ずっといてよ!

そのほうが、何かと

ギブアンドテイクできるしさ」

さては、生贄の常連にする気?

でも、均ちゃんありがとう!

「ね、お兄ちゃん!

玄子ちゃんにずっといてもらおうよ」

均ちゃんが満面の笑みで

孔明さんを見つめる。

「均・・・」

孔明さんは白羽扇を左右させると

「・・・そう・・・・だな

こんな変人、二人とおるまいから」

へ、変人?

孔明さんに変人扱いされるんかい!?
              
              
「あいつは素直じゃないが

玄子がいてくれて嬉んだよ。

“変人”はあいつなりの

誉め言葉だ!よかったな!

契約の話を持ち出さなかったのは

あいつなりの気遣いなんだ。

わかってやってくれや~」

元直さんが頭を撫でてくれた。

元直さんの手は

意外とゴツゴツしていて大きい。

「ほら、俺さ剣術の達人だから」

元直さんは両掌を広げてくれた。

「剣術・・・あ、そうだ。

孔明も玄子と一緒に剣術学ばないか?

自分の身くらいは自分で護ろうぜ!」

え?私はもう決定されてんの?

「剣術・・・ですか?」

「ああ。自分の体は勿論

精神も鍛えられるし

健康にもいいぞ!

決まりな!」

こうして私はなぜか

孔明さんと一緒に

剣術を学ぶことになってしまった。
           
            
「違うだろ!玄子!!

学ばせて頂く光栄を

授かった! だろうが!」

|

白羽扇

「五丈原??

しらな~い!」

なんじゃそりゃ?

「君に聞いたのが

間違いだったな。

だけど・・・本当に何の記憶も

ないとは・・・

想い出さえも喪失するのは

哀しいのか、楽なのか・・・

それとも何か他の理由が?」

孔明さんは椅子に腰を下ろして

考え出した。
          
         
         
「ま、気にしなくていいよ!」

気にしてもどうにもならないし。

「君がいうのか?」

孔明さんはフッと笑った。

やっと自然な笑顔が見れて

私はひとまず、安堵した。

「だが玄子。

これから先ーー」

そうなんだよね~

明日、

出て行く予定です」

何だかんだ言って

命助けてもらったし

自力で動けるようにさせて

もらったからね。

すっごく迷惑かけてるから

これ以上は・・・。
          
        
         

「行く当てないのに

どこへ行くんだ?」

孔明さんが私にも席を勧めてくれた。

「う~ん。生きてる限り

何とでも出来るから

とりあえず、日雇いバイトでも

探してみるよ」

記憶がなくても出来ることは

沢山あるし。

「そう・・・か」

あれ?

予想だともっと喜んで

とっとと出て行け!って

貌するかとおもったのに。

何か寂しそう??
           

「どうした?」
          
           
「あ、いや。

孔明殿って感情が

表情に出やすい人だなって思って。

智で世の中を治めたいんなら

あまり表情読まれないほうが

いいんじゃないかな?」

ま、明日の今頃には

何事もなかったかのように

孔明さんは今までどおりの

時間を送るだけだろうから、

説教でも何でもいいや。

もう少しだけ

この人と、話していたい。

こんな変人、

二人と出会えないだろうから。
         
                   
「君の言うとおりだが、

無意識のうちに出てしまうようだ。

どうしたものかな・・・」

孔明さんは苦笑いしながら

白羽扇を左右させた。

滅多にみられないであろう

苦笑いした孔明さんの表情が

拝める折角のチャンスを

白羽扇が阻害した。

阻害? 白羽扇?

「それだよ!孔明殿!!」
           
              
「孔明、玄子~

メシできたぞ~」

元直さんが入ってきた。

「うわっ!玄子、

お前大胆なやっちゃな!

人間嫌いの孔明が

他人に触れられても

嫌がらないとは・・・見物だ!」
            
              
え? 何が??

私は孔明さんの表情が隠れる

角度に白羽扇をセッティングしてた

だけなんだけど。

「っておい!見物なのに

孔明の表情がわかんね~じゃん!」

それを聞いた私は

孔明さんにVサインをした。
              

「とりあえずの礼に

暫くこの亮が君を雇ってやるよ

光栄に思え」

|

説教部屋?

孔明さんが曹操が嫌いだと言うのは

この私でさえも解っていた。

それなのに・・・

「こ、孔明殿~」

ヒソヒソ声で話しかけてみた。

「何か用か!?」

うげ~ やっぱ 

激☆不機嫌だ!

孔明さんって感情が顔に

現れやすい人なんだな~

なんて観察してる場合じゃない!
             
                 

「あの・・・孔明殿が、

大嫌いな曹操に対抗するなら

天下三分之計ってこと?」

え~い、こうなったら

色々足して二で割って

当って砕けろ! だ!!
          
           
「・・・・・君は・・・・・・・」

孔明さんは、じっと私の瞳を見た。

「玄子、来るんだ」

な、何? 説教?

機嫌の悪さ増幅させちゃった??
             

孔明さんは私の手首を掴むと

書斎に向かって歩き始めた。

「あれ?玄子ちゃん

これから説教されるの?」

均ちゃんが私たちに気付いた。

「やっぱ説教部屋なの?」

孔明さんは黙然としたままだ。

「お兄ちゃんの説教、

筋が通り過ぎていて、

恐いよ~。頑張ってね。

肉、サービスするから」

均ちゃんは生贄(いけにえ)を捧げて

開放感に浸っているようだった。
              

こ、こわひよ~。

背が高いから、歩くのも早い。

私の視界には

孔明さんの肩までしか映っていない。

・・・でも、無言の背中からは

刺々しい「気」が抜けているような

気がした。

気休めかもしれないけど・・・。

             
「早く入れ!」

孔明さんに引き寄せられるように
           
書斎に入室すると、

即座に飛び込んできたのは

竹に綴られた文献の塊。

きっとこの莫大な古人の知恵が

孔明さんの叡智を養ったのだろう。
           
               

書物に囲まれた部屋を見回すと

机、椅子、香炉、蝋燭立て、

壁には「澹泊明志 寧静致遠」

と書かれた対聯が掛かっている。

なのに、綺麗に片付いてるな~。

余計なものは何一つない。
            
             
「玄子、いつまで目の体操を

すれば気が済むんだ?

これが、

私たちの・・・漢国全土の

地図だ」

キョロキョロする私に

孔明さんは大きな地図を

机の上に広げて見せてくれた。

「漢国?」

そうか、私は漢国って

国の人間だったんだ。

「私は君をここで拾ってしま・・・

ここで君と出逢ったんだよ

旅の途中だったのか?」

孔明さんが

白羽扇で指した

地図の北方

書かれた地名はーー
        
         
          

「五丈原?」

|

三つの・・・

「天下・・・三分之計?」

今の情勢がわからないから

何ともいえないけど

「何で三つなの?

天下は統一してなんぼでしょ?」

私は腕を組んで考える・・・

振りをした。
           
           
「均、何本か

棒を持ってきなさい」

孔明さんに言われ、

均ちゃんは棒を持ってきた。

「玄子、この棒で世を語ろう。

君なら何を語る?」

え?孔明さんが話ししてくれるんじゃ

なかったの?

「たまには君の脳内を

探険させていただこうか」

げ!孔明さんに笑われるだけじゃん!

「遠慮します」

これ以上、失望はされないだろうけど。
          
            

「ふぅ~ん。今夜は元直兄が

イノシシを焼いてくれると

いっていたんだが・・・

食べたくないのか?」

うっ!に、肉~!

「喰う!」

あ~既に孔明さんには

私の脳内、

探険され済み・・・


        
         
私はう~んと唸ってから

「孔明殿、この棒・・・

もしも弓矢だったらって

シリーズでもいい?」

孔明さんは一瞬

白い歯を見せると

「弓矢でも槍でもかまわない」

白羽扇を左右に煽いだ。

「いきまする」

「いけ!」

と掛け声に合わせて

手短に話した。

「一本では簡単に折られるが

二本では苦戦しながらも折られ

三本だったら折られない

力を合わせれば強いさ!

ってのはどう?」

むかぁし、昔、

どっかで聞いたような話が

脳の片隅にあったので

引っ張り出してみた。
          
         
「へ~玄子にしては

書物を読んだような口ぶりジャン!」

ちっ、ばれたか。でも、

「元直殿、

イノシシは食べさせてもらうよ!」

「はい、はい」

これで夕食は安泰じゃ!
              
             
「本当にそうかな、玄子。

玄子、この棒、折ってみなさい」

孔明さんは私に

一本の棒を手渡した。

「これくらい・・・」

と余裕で折れると思ったら

「あれ?

ふんぬ~」

どんなに力んでも折れない。

「均、折って見ろ」

私から棒を受け取ると

均ちゃんはポキっと

簡単に折ってしまった。

「次だ」

孔明さんは二本まとめて

棒を均ちゃんに渡した。
          
            

「ゔ・・・無理だ」

均ちゃんは息を切らしながら

断念した。

「はい、元直兄!」

「えぇ?俺も?」

二本の棒は

元直さんの手の中で半分になった。

「次はこれです」

孔明さんは容赦なく三本の

棒を手渡した。

「幾ら俺でも無理だって!」

元直さんは暫く健闘したが

ついに音を上げた。
           
           
「孔明、お前やれよ」

元直さんに促され

孔明さんに三本の棒は

バトンタッチされた。

「はい」

孔明さんはあっさりと

懐刀で半分に折った・・・

「ちょっと!孔明殿!」

そりゃないっしょ!

「誰が手で折れと?

何でも力で解決しようとするから

無駄な争いが起こるんだよ」

孔明さんはフッと笑った。
          
           

「じゃ、やっぱ曹操みたいなやつが

天下に一番近いのかな?」

均ちゃんが、無意識に口にすると

「孔明と曹操って似てるってこと?」

元直さんまでもが

言ってはいけないことを・・・。

「バギッ」

孔明さんは手にしていた

棒の束を今度は素手で折った。
          
             

鋭利な刃物のような

孔明さんの尖った空気が恐くなった。

「こ、孔明って怒らせたら

誰よりも恐いかも・・・」

元直さんが顔を引きつらせて

のけぞった。

「均、夕食の準備手伝え!

玄子、お前は病み上がりだ。

孔明とここで待ってろよ」

おいおい、元直さん!

こんな時だけ病人扱いしないでくれ~!
       
         
「あとは・・・任せた!

夕食までに孔明の機嫌を直せ!

お前なら出来る!」

「ごめんね~イノシシの肉

玄子ちゃんの大盛にするからね」

元直さんと均ちゃんは

無責任にも

私と孔明さんだけをおいて

夕食の準備をしに

部屋を出てしまった。
         
      

ど・・・どうしよう~。

きまずい重い空気が・・・。
         

|

管仲と楽毅って?

「管仲、楽毅?」

誰それ?

「誰それ?って思ってんじゃないよな?」

元直さんが私の顔を用心深く覗いた。

「ぴんぽ~ん!さっすが、元直殿!」

だって~知らないも~ん。

「お前には常識ってもんがないのか!?」

元直さんが あいや~!と首を振った。

「・・・・・ない!残念ながら!

もう、常識とかそんなの諦めちゃってよ!

自分が何者かさえわからないんだもん!」

素直さと、開き直りの速さだけが取り柄です。
                    
               
             
「孔明殿。管仲、楽毅って?」

孔明さんは、呆れることなくいつも

わたしのマヌケな非常識に向き合ってくれる。

「私は初めっから玄子には

何も期待していないから

教えてやろう」

言葉は相変わらず冷淡だけど・・・。
             
               
            

「管仲は、春秋時代の斉の桓公に

仕えた名宰相。

楽毅は管仲より約400年後の

戦国時代に亡国の将から

総帥になった人物なんだよ」

孔明さんはどんなことにも

いつも真剣に応えてくれる。
           
              
「質問ついでに。

その管仲と楽毅に共通点というか

孔明殿が目指すものがあるんですか?」

「相変わらずマヌケてるが

なかなかいい質問じゃないか」

元直さんが、よしよし、と

私の頭を鷲掴みして撫でてくれた。

嬉しいけど酒回るって!

「管仲も楽毅も、

武ではなく智を以って

天から地に至るまでを治めたんだ」

う~ん、解るような

解らないような・・・
           
           
            
「じゃ、孔明さんなら

今のこのご時勢をどうやって

治めるの?」

って言っても私が今居る

場所さえ定かじゃないんだけど。

「私なら・・・・・

天下を三分する」

|

第一部・目次

時空孔明傅

第一巻・人生の師
*第二巻・游侠の士

好評発売中!!

第二巻詳細はこちら!

         第一部・目次

3月4日をもって、第一部終了いたしました。

応援、謝謝でした!

終了後も多くの方に読んでいただいているようなので

予定より早く第二部を始めよう! という気になってきました。

そんでもって、4月10日に

第二部を開始しました(^v^)

第一部は100日連続更新しましたが

第二部は気が向いたとき更新です。

第二部はこちらから

本当に気が向いたらって感覚の更新です^_^;

二ヶ月で10話・・・・・・。

三顧の礼はあるのか!?

*****************

登場人物:      

玄子   :       時空迷い人
             ひょんなことから後漢末期へ
             一切の記憶を失っている。
             孔明の弟子入りが目標!

             
諸葛亮(字は孔明) 

       :      隆中の山奥で
              隠居生活を営む変な人
              冷たいのか優しいのか不明。
              玄子を(本人曰く)偽善行為で
              助けたらしいが・・・。
                  
 徐庶 (字は元直)

      : 孔明の親友にして玄子の理解者
        ・・・になるのか?
        義侠心に篤く ひょうきんな人柄。 

                      
 諸葛均  :孔明の弟。
        玄子の嘆きを聞いてくれる癒し系。
        ただ今隆中で留守番中。

 郭嘉 (字は奉孝)

       : 曹操軍で別格の才智と曹操の信頼を
         得ている名軍師。
         傍若無人で品行がおさまらず度々
         弾劾されても全然相手にしないので
         ますます曹操に気に入られている。

               

      

 第一話 夢遊病      第百二十一話 寧静致遠

 第二話 想い        第百二十二話 郭嘉を知る者

 第三話 記憶      第百二十三話 流浪の義士・張遼

 第四話 挑発        第百二十四話 仁義の懇願

 第五話 呼び声       第百二十五話 返された翼

 第六話 朝霞         第百二十六話 無骨者の心労

 第七話 瞳           第百二十七話 三つの罪

 第八話 羽の剣(つるぎ)   第百二十八話 三つの条件

 第九話 交渉          第百二十九話 美髯公への想い

 第十話 早春賦        第百三十話 第一部・最終話

 第十一話 名前     

 第十二話 玄子

 第十三話 決意  

 第十四話 恩義の容(かたち) 

 第十五話 士は・・・ 

 第十六話 実名

 第十七話 フリーズ   

 第十八話 略奪?

 第十九話 義侠心   

 第二十話 惹かれるわけ  

 第二十一話 管仲と楽毅って?

 第二十二話 三つの・・・

 第二十三話 説教部屋?

 第二十四話 白羽扇

 第二十五話 変人?

 第二十六話 剣術のお稽古

 第二十七話 その気 !

 第二十八話 し~ちゃん

 第二十九話 集会?

 第三十話 微妙な関係?

 第三十一話 臥龍か鳳雛

 第三十二話 甘党 

 第三十三話 琴に想う

 第三十四話 知音

 第三十五話 記憶の欠片

 第三十六話 実は・・・何?

 第三十七話 月の名

 第三十八話 玄月さんの音色

 第三十九話 月の闌(たけなわ)

 第四十話 玄月さんの正体

 第四十一話 月餅の力 

 第四十二話 水鏡先生の条件

 第四十三話 よきかな

 第四十四話 いってきます

 第四十五話 位置関係

 第四十六話 城門前にて

 第四十七話 パレード

 第四十八話 ロバの声

 第四十九話 黄巾の乱

 第五十話 黄巾なわけ

 第五十一話 宦官って?

 第五十二話 小手試し

 第五十三話 お茶屋の朋友

 第五十四話 張角の志を継ぐ者

 第五十五話 二頭の龍

 第五十六話 玉座の悲劇

 第五十七話 漆黒美人

 第五十八話 平和ボケの代名詞

  第五十九話 妹と弟子

 第六十話 黄口の頃

 第六十一話 読書方法

 第六十二話 均ちゃんの反抗期

 第六十三話 窮鳥

  第六十四話 『論諸子』完成?

 第六十五話 沈黙の果てに・・・

 第六十六話 絆の芽

 第六十七話 董卓の心

 第六十八話 賭けの予約

 第六十九話 丁原<赤兎馬

 第七十話 呂布+董卓=生き地獄

 第七十一話 姦雄・曹操

 第七十二話 悪運の神様

 第七十三話 研がれし音

 第七十四話 信頼の決断

 第七十五話 呂伯奢の悲劇

 第七十六話 玄子→玄亮

 第七十七話 洛陽と漢王朝

 第七十八話 盟主の座

 第七十九話 名門と姦雄

 第八十話 復習の時

 第八十一話 江東の虎

 第八十二話 はみ出し救世主

 第八十三話 黄河

 第八十四話 遷都

 第八十五話 連合軍解散

 第八十六話 連環の計

 第八十七話 蝶の正体

 第八十八話 司徒・王允

 第八十九話 王允の計略

 第九十話 董卓→貂蝉←呂布

 第九十一話 唐周さんの洗脳

 第九十二話 帝のゆくえ

 第九十三話 子青

 第九十四話 庭園の月

 第九十五話 月下に一献

 第九十六話 抱膝のクセ

 第九十七話 流転の呂布

 第九十八話 游侠の士

 第九十九話 二虎競食の計

 第百話 一廉(ひとかど)の軍師

 第百一話 山葵(わさび)の結果

 第百二話 信じる者は・・・辛い!

 第百三話 性悪説と性善説

 第百四話 春節じゃ~

 第百五話 春聯

 第百六話 唇亡歯寒

 第百七話 想定外の和睦

 第百八話 英雄は英雄を知る

 第百九話 刮目(かつもく)

 第百十話 屯田制

第百十一話 孔明傅第一巻発売!

 第百十二話 脱線の果て

 第百十三話 弱点

 第百十四話 味わう

 第百十五話 悪来・典韋

 第百十六話 悪来への誓い

 第百十七話 陳登の企み

 第百十八話 智で地を!

 第百十九話 想定外

 第百二十話 勝負の条件

 

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惹かれるわけ

「元直殿、孔明殿!

今週中に更新しました!」

これでノルマは達成。

どうだ!

「以前は毎日更新してたのにな・・・」

ボソッと元直さんと孔明さんは

囁きあった。

「うっ」

さっきまで美味しかったお茶が

味気なく感じられる。

「君も酒飲む?」

酒?飲んだことないなんて

いえない・・・飲んだ記憶がないだけか?

「の、飲ませてもらいます!」
          
         
    

「それで・・・文中さんはなんと?」

美味しいのか、どうなのか解らない

酒の感想を求められる前に

話を進めよう

「文中は

『ここから先は一人でやる。

自分のことで元直に迷惑はかけられない

俺の死に様をお前だけでも

見届けてくれ』っていいやがった」

でも、一度失敗してるから

上手くいく可能性って少ないよね・・・
            
             
           

「そこで俺は、

あいつに友情の鉄拳を食らわせて

気絶させ、馬飛虎を一刀両断のもと

仇を撃つことに成功したんだ」

ってあっさり話すね~

元直さん。

彼にとってはジャイアンは敵じゃなかったって

ことなんだろうね・・・

でも、一刀両断ってことは・・・
          
          
        

「馬飛虎は文中以外の奴にも

同様の苦しみを与えていたから

街の中での目撃者は皆

見てみぬ振りをして

俺をかくまってくれようとしたんだ」
            
            
           
それでも、
元直さんは

匿ってくれた人や

母親に危害が加えられるのを案じて

名前を変えて逃亡生活に身を

投じたのだと言う。
             
           
「だってさ、折角、文中が妻と財産を

取り戻したのに、再び馬飛虎の

せいで牢獄に繋がれたんじゃ

意味ないだろ?」

他人のためだけに

この元直って人は・・・

「でも、そんなことしたら

元直殿の想い人が悲しんだんじゃない?」

どさくさに紛れて聞いてみた。

「俺の?」

元直さんは「プ~」と酒を噴き出した。
             
            
「俺さ、そのへんは孔明と同じで

興味ないんだよね・・・

っておい、本当だって。

負け惜しみじゃないんだってば!

玄子、疑いの眼差しで俺を見るな!

な?孔明!」

フッと孔明さんはいつものように

冷静に笑いながらも

「こんな慌てた元直兄、

初めて見ました。

玄子は恐いもの知らずで

何でもノンジャンルで訊いて来るから

気をつけたほうがいいかも。

それでいて、自身のことは記憶喪失・・・

ちょっと不公平な気もするが」
               
            
なんだか上手くかわされたような・・・

「で、元直殿はどうやって

孔明殿と知り合ったの?」

「黄承彦先生の開いてる私塾に

潜り込んだ時に

独りだけ浮いてる奴がいてさ。

今更説明する必要もないけど

本当に面白くて変なやつなんだぜ、

この孔明って男は」

ま、平凡ではないよね、確かに。
           
          
             

元直さんは孔明さんに酒を注ぐと

暴露するように語り始めた。

「志を語り合った時なんて孔明は

『君はどっかの太守ぐらいには

なれんじゃない?』って他人を評しておいて

周りに『じゃ、お前は?』って聞かれるとな

フッて笑うだけ。

『感じ悪~』って皆で非難したらさ

何て言ったとおもう?」

ま、謝ることはないよね。

「興味ない・・・とか?」

何事にも無関心な孔明さんなら

確率から言ってこの台詞かな?

「玄子、もしも孔明がそんな志の漢(おとこ)

だったら、この俺が惹かれると思うか?

俺は、孔明の・・・孔明、お前の口から

何度でも聞かせてくれ。

お前の志を。それ聞くたびに

俺は、俺自身も高められるんだ」

たまに出てくる熱い友情モードに

すっごく懐かしくなる魂の揺らぎを

感じるのはなぜだろう?
          
            

「孔明殿、お願いします」

無関心で、冷静な孔明さんの

志ってなんなんだろう?
        
          
「管仲、楽毅のような

人物になる!

|

義侠心

「玄子ちゃ~ん、

一体何日俺を待たせるのかね?」

元直さんが恨めしそうに睨む。

「うぅっ。

半月も待たせてごめんなさいm(__)m」

今回ばかりは言い返せない。

謝りまくるに限る。
         
          
「いいよ、玄子。

義侠心に篤い元直兄は

こんな小さなこと、

気にしていないから。

時間をこれ以上無駄に浪費するのは

如何なものだろうか?」

孔明さんが元直さんの杯に

酒を注ぎ足しながらなだめてくれた。

「ま~な、俺の大活躍話、

耳の穴かっぽじって、

よ~く聞け!」
         
            
             
元直さんの話が再開された。

「文中が死を選ぶしかないと

言い切るのを観ていられなかった俺は

文中とともに、仇討ちすることにしたんだ」

仇討ちってあっさり言うけど

「そんなことしたら、

元直殿が危なくなるじゃん」

他人のために、

自らの命の危険も顧みない人なのかな?
              
            
「俺は、文中の憤りを客観視したまま

何もしない自分のほうが腹立たしいからな」

当然のようにいえる元直さんって

いい漢(おとこ)だな。

「だから、潁水に戻って馬飛虎が

街中に現れるのを待っていたんだ。

で、ついに、来た!って時にだ」

元直さんはここまで話すと

ググッと酒を飲み干した。
          
           
「文中がトンでもない事を

言い出しやがったんだ」

早く続きが聞きたい私は

空になった杯に溢れんばかりの

酒を注いだ。

「文中さん、どうしたの?」

すると元直さんは

「続きは次回のブログで話す。

聞きたかったら・・・

悔しかったら早く更新してみろ!」

半月も更新していなかったことを

やはり根に持っていたんだ・・・。
         
          
「次回、今週中に更新できなければ

私と元直兄の共通の朋友を

玄子には紹介しないぞ」

孔明さんまで実は根に持ってたの?

「君は何か目標がなければ

行動に移さないようだからな・・・」

孔明さんに指摘され

そうだったかも・・・と自分のことを

初めて知った。

「共通の朋友の名前だけでも教えて!」
           
             
          
「姓は龐(ほう)、名は統

字は士元だ」

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